日本から飛行機でおよそ9時間。
近年著しい経済成長と人口世界一のニュースが取り沙汰され、注目を浴びているインド。煌びやかなデパートや、レストランも増え、都市化が進む一方で、奥深く長い歴史のあるインドの思想やカルチャーも、今も色濃く残っています。
ここでは、これからインド就職を検討されている方向けに、インドの人々が大切にしている思想を紹介し、インドで働くことについて深掘りしていきます。
インド人と日本人、どんな思想の違いがある?
日本とインドの間にはいくつかの目立った文化的な違いがあることがわかります。特に、「権力格差」「競争文化」「不確実性回避」「長期的思考」の指標の差が目立ちます。
権力格差とは?インドと日本、パワーバランスに対する思想の違い
インドの文化は、社会的な階層制度があり、特にカーストが非常に強く根付いています。これは、権力格差が大きくなる原因の一つとなっています。一方、日本では、社会的な階層は比較的緩やかで、権力格差もそれほど大きくありません。
また、インドでは、権力者や上級階層が持つ権力に対して敬意を払うことが一般的であり、権力者が権力を行使することに対して批判的な見方をすることはあまりありません。しかし、日本では、権力者に対しても公正さや正義を求める傾向があり、権力者による権力の濫用に対して批判的な見方をすることが多いです。
さらに、日本の教育制度では、公平な機会を与えることが重視されており、学校教育においても、個人の能力や努力によって社会的地位が向上することが期待されています。一方、インドの教育制度は、依然として社会的階層制度に基づく不平等な教育機会が存在することが指摘されています。
以上のように、インド人と日本人の思想や文化には、権力格差に対する取り組みにおいても異なる特徴があります。
インドで働く上で、組織においてトップダウンの指示や承認プロセス、トップ同士の交渉などが重要視されていることを理解しておくと働きやすいです。
競争文化とは?インドと日本、競争に対する思想
インドでは、個人的な成功よりも、集団の成功や社会的な価値観を重視する傾向があります。そのため、個人的な競争よりも協調性や共同体のために努力することが重要視されます。また、インドの文化や宗教には、相手を傷つけない、相手の面子を損なわない、他人の意見を尊重するなどの価値観が含まれており、競争に対して積極的ではありません。
一方、日本では、競争や個人の努力が重要視されます。日本の教育制度では、競争的な試験や入試が行われ、個人の能力や努力によって成功することが期待されます。
インドの製造業などにおいては、面子カルチャーとなる組織や組織のトップのために働くことを大切にしている傾向がありながら、IT産業が勃興する中で、個々の力で競争力を高めていくという価値観も醸成されているように感じます。なによりも、2023年に人口世界一となったインドでは、急速な経済発展と教育や就職市場においてよりも個々間の競争意識が高まっている印象を受けます。 インドで働く上で、所属する企業のカルチャーを尊重したコミュニケーションが重要になります。
長期的思考とは?インドと日本、時間に対する思想
インドの文化では、伝統的な価値観や信仰体系が強く根付いています。しばしば過去の経験や教訓にもとづいて行動し、未来に対する長期的なビジョンや計画よりも現在の状況や即時のニーズに焦点を当てる傾向があります。
一方、日本の文化では、長期的な視野や持続可能な発展への取り組みが重要視されています。過去の経験や歴史から学びながら、将来に向けて計画を立てることに注力する傾向があります。長期的な安定や経済的な成長、技術革新への投資などが重要視され、組織や企業、個人の行動にも反映されています。
日本とインドの間での納期に対するこだわりの違いは、長期的思考か短期的思考かという指標が要因であると考えられます。インドで働く上で、日本で当たり前のように守られる納期は日本特有の独特な文化であると認識し、計画性の重要度を丁寧にコミュニケーションすることが大切です。
不確実性回避とは?インドと日本、不確実性に対する思想
インドでは、不確実性を受け入れ、自然の摂理に従って生きることが重要視されます。インドの宗教や哲学には、万物は常に変化し、不確実なものであるという考え方があり、人生の不確実性に対しても受け入れる傾向があります。
一方、日本では、不確実性を回避し、安定した状態を求める傾向があります。日本の社会や経済システムは、安定や予測可能性を重視しており、不確実性に対するリスクマネジメントが重要視されます。計画的で合理的な行動を好む傾向があり、不確実性に対しても可能な限りの対策を取ることが求められます。実は、不確実性の回避を好む指標が世界基準でも高い日本。
日印両国間の不確実性に対する思想の違いは大きく、仕事をする上では双方のギャップを理解しておくことで、仕事をスムーズに進められるポイントになりえます。
まだまだ発展途上であり、インフラが完全には整っていないインドでは、日々予測不可能な事態に遭遇します。長期的で綿密な計画(ウォーターフォール式)を立てずに、仕様や設計の変更が当然あるという前提に立ち、短期的でラフな計画(アジャイル式)を好むのも国のフェーズや思想が反映されています。
納期を当たり前の自然に守れる日本人の感覚と、常に起こりうるトラブルに対して、多くの選択肢と寛容に対処する余白を持っているインド人が、それぞれの良いところを発揮することでより良い仕事ができるのではないでしょうか。
日本人と働くインド人へインタビュー、日印の思想の違いとは
日系スタートアップで働いて3年が経過したインド人にインタビューしました。思想の違いから働き方の違いをどのように感じているのか、新しい学びや課題はあったのか。これから働き方もどんどんグローバル化する中で、日印両者が参考にしたい内容です。
日本人とインド人の働き方の違い
最も大きな違いは、時間に対する意識だと思います。日本人は時間を守るとよく言われていますが、仕事をする上でも締切や納期へのこだわりはインドと比べても目を見張るものがあります。納期直前の急な変更やトラブルへの柔軟性は低いように感じました。
一方で、インド人は普段から予測不可能な出来事を受け入れる姿勢でいるので、急な変更にもパニックを起こすことはありません。時に時間や納期にルーズになってしまうところは、日本人に見習い改善したいところです。
日本人と働いていて驚いたこと
英語のコミュニケーションにおける言葉の選び方で驚いたことがあります。英語をネイティブレベルで話す人が少ないことは、日本人と働く中で分かってきました。意思疎通ができれば仕事上は問題ありませんが、直接的な単語や失礼な言い回しをされて残念な気持ちになったことがあります。悪気があってそのような言葉使いになっているわけではないと理解しているのですが、驚いたこととしては印象的な出来事でした。
日本人と働いて学んだこと
タスクマネジメントと仕事へのこだわりです。納期までに高いレベルのクオリティの仕事をやりきるためのマネジメントは、規律のある日本の文化によるものだと思います。ワークライフバランスに対する意識がインド人とは異なり、休日に仕事の連絡に応えるのは疲れるときもありますが、ひとりのプロフェッショナルとしてこだわりを持って働くマインドセットは日本人から教わりました。
インドで大切にされている思想や格言
昨今世界の名だたるIT企業のトップに、インド人CEOが選ばれています。インド式算数や英語教育が日本でもフィーチャーされるようになり、優秀な人材が育つ環境がインドにあることが、少しずつ知られてきています。
グローバルカンパニーのCEOとして注目される彼らも、インドの歴史的な偉人の言葉に救われた経験もあったことでしょう。
ここでは、インドで受け継がれる思想や格言をいくつかご紹介します。忙しない日常を日本で過ごす私たちも大切にしたい考え方です。
マハトマ・ガンジー
インドの歴史を語る上で外せないガンジー。20世紀初頭のインドの独立運動家であり、非暴力抵抗の提唱者として広く知られています。インドの国父とも呼ばれ、平和と非暴力の哲学を通じて社会的・政治的な変革を追求しました。
「穏やかな方法で、あなたは世界を揺るがすことができる。」
「あなたが見たい変化を自分自身に起こしなさい。」
「許しは強者の資質である。」
許しはガンジーにとって、個人的な成長と道徳的な価値を体現するものでした。相手への許しを通じて争いや敵意を超え、和解と共存を促進することが重要であると説き、差別や不正に対しても許しと非暴力を守り続けました。
インディラ・ガンジー
インディラ・ガンディーは、第3代および第6代のインド首相です。マハトマ・ガンジーの孫娘であり、ジャワハルラール・ネルーの娘として1917年に生まれました。
彼女は1966年にインド首相に就任し、国内外でリーダーシップを発揮しました。任期中は様々な課題に直面しましたが、インド国内の貧困削減、農業開発、産業化、外交政策の強化などを推進しました。
「問いかける力こそが、人類の進歩の基盤である。」
人間の進歩や成長は、新しいアイデアや疑問を投げかけることから生まれると提言しています。問いかけることによって、私たちは既存の状況や思考パターンに疑問を投げかけ、新たな発見や解決策を見つけることができます。
チャンドラ・ボース
チャンドラ・ボース(Subhas Chandra Bose)は、20世紀初頭から中盤にかけて活躍したインド独立運動家です。インドの独立を追求し、イギリスからのインドの解放を目指して戦った人物として知られています。
「最も大きな罪は、不正義や間違いを妥協することである。」
この言葉は、チャンドラ・ボースが正義と真実に妥協せず、信念を貫くことの重要性を訴えています。彼は正義と自由のために戦い、妥協を許さない姿勢を貫きました。
サマリー
急激な経済成長に伴いインドの存在感は高まり、日本の多くの企業も、インド市場の拡大に伴いインド拠点の開拓を進めています。両者の価値最大化のためには、思想の違いを認識し丁寧なコミュニケーションが必要です。
私たち日本人は長年製造業をはじめとする「日本品質」を世界に届けてきました。今でも日本の規律正しさやこだわりが世界に認められているのは、時代の先駆者が築き上げた功績です。一方で、柔軟により良い方へと速く変化し続けるインド市場と融合するために、わたしたち日本人はインド人に習うべき考え方も多くあります。両国の思想や文化のよいところが混ざり合うことによって、化学反応が起こるのだと信じています。
インドへの転職&就職海外転職に関するご相談はこちらから インドへの転職&就職に関しての情報もご参考ください。 |