アメリカに駐在員として出向し、初めて「人事/人材採用」に関わる方も多いかと思います。アメリカでの採用活動を開始する際に、人事関連のポイント(アメリカにおけるルール)を把握しておくことがトラブルを避けるためにも非常に重要です。この記事では、アメリカでの採用活動において押さえておくべき事項についてご紹介いたします。
アメリカでは、従業員を保護する法律が日本に比べて厳格です。採用活動を始める前に、雇用機会均等法(Equal Employment Opportunity Act)や米国の法律と規制について正確に理解し、それに従った採用活動を進める必要があります。
雇用機会均等法(Equal Employment Opportunity Act)とは
雇用機会均等法(Equal Employment Opportunity Act)は、アメリカ合衆国の法律の一部であり、「人種、性別、宗教、国籍、年齢、障害、およびその他の保護されたカテゴリー」に基づく差別を禁止するための法律です。これには、雇用の選考、昇進、解雇、給与設定、労働条件など、雇用に関連するすべての側面が含まれます。
雇用機会均等法は、個人のバックグラウンドや属性に基づく差別を禁止し、すべての労働者に平等な機会を提供することを促進します。したがって、「人種、性別、宗教、性的指向」などに基づく差別は許容されません。
雇用機会均等法は、連邦政府が制定した法律であり、それぞれの州にも類似の法律や規制が存在する場合があります。また、雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission、EEOC)が、雇用差別の申し立てを受け付け、調査し、対処するための連邦機関です。雇用機会均等法は、アメリカの労働市場において「公平で差別のない雇用機会を確保」するために非常に重要な役割を果たしています。採用企業は、原則として地域の法律に従ったプロセスを実施しなければなりません。そのため、面接時の質問や雑談にも十分な注意を払う必要があります。
雇用機会均等法で定められている質問項目
特別な理由がない限り、以下の内容については採用面接で質問してはいけません。
「年齢、人種、宗教、障害、性別、マリッジステータス、家族、妊娠状況、出身国」など
確認してはいけない質問例
●「グリーンカードを持っていますか」「日本国籍ですか」など、応募者の国籍やビザステータスをダイレクトに確認してはいけません。例えば、「内定受諾後に合法的に米国で働くことが可能な書類は提示できますか」といった質問は許容されます。
●「母国語について」確認することも禁止されています。例えば、業務で日本語が必要な場合などは、理由を説明した上で、「こちらのポジションを遂行するにあたり、社内で日本語でやり取りをする必要がありますが、日常的にどの程度、日本語を使用されていますか」という形で尋ねる必要があります。
●「結婚されていますか、またお子様は何人いますか」など、婚姻に関する質問も禁止されています。例えば、「残業などが発生した場合、対応可能ですか。時間の制約などはありますか。」というように、婚姻には直接触れない形の質問に変換しましょう。
アメリカで一般的な面接での質問事項
アメリカでの面接では、以下の項目に関して質問が多く見受けられます。
●自己紹介や自身の強み・弱み
●転職希望理由や志望動機
●今後のキャリア形成に関して
●学歴(卒業大学/大学院など)
●現在までの職歴(経験)とスキルに関して
●出張や残業の可否
●アメリカでの就労許可に関して(合法的に就労許可があるか)
応募するポジションに必要な経験とスキルに関する質問に焦点を当て、過度にプライベートな質問は避けるように心がけましょう。
Employment At-Will(任意雇用)
アメリカの法律である「Employment At-Will(任意雇用)」は、日本では馴染みの少ないCommon Lawの一環です。この法律は、オファーレターや雇用契約に多く記載されており、従業員が自由意志で退職できることと同様に、採用企業も従業員をいつでも解雇できることを意味しています。
日本では長期的な雇用を重視する傾向がありますが、アメリカでは異なり、「長期的に勤務してくれますか。何年ぐらい働けますか」などの質問は、Employment At-Willを考慮すると避けた方が良いでしょう。
まとめ
日本とアメリカでの採用活動には、法的要件や文化的違いが存在します。アメリカで人材を採用する場合でも、アメリカの法律を遵守し、注意を払うことが不可欠です。日本の採用と労働概念をそのまま適用することは避け、十分な注意を払って採用プロセスを進めましょう。
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