海外転職の面接対策において、面接官を務めるキーパーソンが誰になるのか、という観点は意外と見落とされる傾向にあります。日本国内における面接では、「人事」「現場」「マネジメント」と順に階層を進んでいく事が多いのに対し、海外転職においては一次面接から「現地法人社長」というパターンも珍しくありません。
本記事では、海外転職のキーパーソンとなる、「ラインマネージャー(入社後の直属上司)」「現地法人社長」「日本の本社の海外事業本部長・役員」の3つのケースについての傾向を解説します。
どのようなことに気を付ければよいか? 知っておくだけで意識することができるので、ぜひご一読ください。
ラインマネージャー(入社後の直属上司)との面接の場合
ある程度の規模を持つ大きなグループにおける「現地化」が進んだ海外法人の場合、採用の決定権が「現場責任者=ラインマネージャー」に委譲されているケースは珍しくありません。日系企業を想定した場合、このポジションを日本からの派遣駐在員が担っているケースもまだまだ多いです。しかし、現地採用者として長年勤めている日本人や現地ナショナルスタッフのミドルマネジメントというケースも、近年では増加してきました。
海外転職時における面接フローにおいては、入社された方がパフォーマンスを発揮するうえで直接かかわることになる現場責任者が、内定の意志決定において強い発言権を持っている事が多くなります。
別の記事でも述べた通り、中途採用面接では、空きポストや補充したい人員のマッチングの要となる即戦力性がもっとも重要なポイントとなります。そのため、現場で「このような人材がほしい」と具体的なニーズやスキルのイメージを明確に持っている「ラインマネージャー(直属上司)」が、採用の意思決定者になるのは必然と言えるでしょう。
そうした組織の場合、「ラインマネージャー」のさらに上司にあたる「社長」や「部門長・役員」などは、原則的には「ラインマネージャー」のサポート的な立場で面接に同席したり、あるいは、念のための確認というスタンスで二次・最終面接を務めたりします。入社後に、応募者と直接の接点をもつ機会が少ない場合は特に、積極的に応募者の合否を主張することは稀です。
それでは、「ラインマネージャー」が面接官となるフェーズでは、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
実際の業務遂行に必要なスキルがありそうか
「ラインマネージャー」が最も気をつけてチェックしたいと考えるのが、実際の業務遂行能力です。営業系、技術系、管理系、等々、選考の対象となる部門領域において、専門技能やポータブルスキルがどの程度獲得されている方なのか、過去の経験や知識をできるだけ細かくチェックしたいと考えます。この点に関しては、過去のキャリアの棚卸を基に、経験を具体的に語れるように準備をしておけば問題ありません。
自分自身との価値観・フィーリングが合いそうか
自分が直接、かつ濃く関わることになる前提のため、自分とフィーリングが合う人なのかどうか?という価値観についてもチェックが入ります。「面接は最初の5分が肝心」とよく言われる通り、対面形式でなくオンラインであればあるほど、しっかりとした第一印象を心がけましょう。
一方、自分と相性がよい人(直属上司)なのかどうか?については、応募者本人としてもぜひ知っておきたいポイントになります。面接の中では、ほぼ必ず質問の時間が設けられますので、面接官の仕事の価値観や、人となりが理解できそうな質問を「どうお考えになりますか?」というオープン形式で尋ねておくのが良いでしょう。
チームワークが築けそうか
「ラインマネージャー」にとっては、自分との相性も重要ですが、自分が現在抱えている他のチームメンバーとの相性も重要なチェックポイントになります。現行メンバーの顔を思い浮かべつつ、上手くやっていけそうか?という判断がなされます。
特に海外転職の場合は、同僚が日本人だけとは限りません。むしろ、チームに日本人が自分ひとりだけになる事もしばしばあります。これまでの経験で、他文化を背景に持つ友人・知人・同僚との交流において、異文化への理解・尊重、興味関心、適応性、柔軟性、などが伺えるエピソードが準備できていると安心感を持ってもらえるでしょう。
現地法人社長との面接の場合
日本本社の規模と関係なく、応募先の海外法人の規模が中小サイズのグループにおいては、採用の決定権が「現地法人社長」に一任されている事が多いです。
緊急度や重要度の高い採用や、社内に他のミドルマネジメントが純粋に居なかったりする場合には、「現地法人社長」が面接官となり、一次面接が最終面接を兼ねていきなり内定に至るケースも珍しくありません。
実際、現地法人社長が日本本社からの派遣駐在員であるケースは非常に多いのですが、日本本社では営業や技術の専門領域を担っていた方が、海外に出てきて初めて採用面接を行うという状況も多々発生します。応募先が中小サイズの現地法人の場合、現地法人社長の役割はマルチタスク化する事が多いため、多忙を極めている方も多い印象です。
いわゆる面接慣れをしていない多忙なキーパーソンが面接官となる場合、どのようなポイントに気をつけると良いでしょうか?
会社の抱える課題への貢献ができそうか
現地法人社長が赴任からあまり間もない場合などは、特に、海外法人の抱える課題感が多方面にわたっていたり、頼れるミドルマネジメントが少なかったり、と、様々な理由から日々ご苦労されているケースが少なからず存在します。
そうした社長にとっては、「頼りになりそうか?」「課題をどんどん解決してくれそうか?」「自分自身をサポートしてくれそうか?」といったポイントが重要な判断基準の一つになります。
この人を入れたら、育成に手がかかりそう……と思わせることなく、ポジティブかつ、能動的に業務に取り組める人であるという印象を持ってもらえるエピソードを伝えられると良いでしょう。
真剣に自社のことを考えてくれそうか
「社長」=「会社」ともいえる存在であり、会社を預かる立場の社長にとっては、一過性のスキルアップ的に物事を考えるタイプの人ではなく、自社のことを真剣に考えて仕事にコミットしてくれそうかどうか?というポイントは非常に重要な要素となります。また、多忙な中で面接に時間を割く社長に、こんな基本的な事も調べてくれていないの?と思われると、それだけで確実に選考通過が望めなくなります。
応募する会社のことを、事前にしっかりと予習した上で面接に臨むこと。これは基本的ではありますが、事前の企業理解が、真剣度を伝えるための必要不可欠な要素となります。きちんと事前に調べてきたという事実、理解しようとしている姿勢、それらをさりげなく質問などを通じて伝えられると良いでしょう。
長期間のコミットが期待できそうか
現地の海外法人における社員の離職率は、日本のそれと大きく異なり、とても高いです。海外経験の長い方の多くは常識として認識していますが、本音としては、もう少し落ち着いて働いて欲しい……と思っている方も、特に、社長には少なからずいらっしゃいます。
海外転職の場合、「なぜ海外?なぜこの国?」という問いはほぼ必ずあります。加えて、短期間の滞在想定ではなく、「腰を据えて長期的に居てくれそうかどうか?」を面接官が判断できる回答があると、より安心感をもった意志決定をして頂ける確率が高まります。
本社の海外事業本部長・役員・社長との面接の場合
「現地化」が進んでいて、決定権が現地法人側に付与されている場合の本社最終面接は、あくまでも顔合わせの場となります。直接業務に関係する質問よりも、応募者が社風に合う人間かどうか、社会人としての経験に応じた常識が備わっているかどうか、といった趣旨のものが多いです。
一方、応募先が海外現地法人のマネジメント層のポジションであったり、本社自体が中小企業・ベンチャー企業であったりする場合には、最終面接で登場する本社サイドのキーパーソンが最終決定権を持つ場合も多々あります。そうした場合、現地法人の社長とは非常に馬が合い、気に入られて最終面接が設定されていても、本社側のキーパーソンの鶴の一声で採用に至らないこともあります。
また、本社の海外事業本部長が、当該国に赴任していた経験があって事情を理解していたり、現在の現地法人社長のパフォーマンスに不満があったりする場合などは、真剣な選考場面となり得ます。
それでは、このようなキーパーソンに対しては、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
本社社員では代替が難しい海外経験・知識・スキルを備えていそうか
現地法人のマネジメント層などの重要ポジションに対する採用に対して、本社側は「駐在員を本社から送り出す」という観点も、当然存在しています。本質的には、本社から送れる人員に限りがあるため、現地法人の現地化をして駐在員を減らしたい、といった動機に基づいて採用をかけているわけです。最終的な意思決定においては、派遣駐在員よりも優位なスキル・経験・知識を備えた人であると思ってもらえることが肝心となります。
“常識的”な人物か
海外での勤務経験が日本での勤務経験を超えるような方、もしくは、海外のみで勤務をしていて日本での勤務をしたことがない方が直面する傾向にある状況として、日本における日本の常識・目線を忘れがちになる事が挙げられます。
これはどちらが正しいという問題では決してないのですが、採用選考のフローにおいて、日本本社側の面接官が特に海外事情に疎い場合などは、判断の目線が日本のそれになる事を認識しておいた方が無難です。対面のみならず、オンライン面接であってもスーツを着用するといった単純な準備だけで、悪印象を防げるケースもあります。
そのような細かいことを気にする企業には行きたくない、と考える方がいらっしゃるのも事実です。そこをどうしても不快に感じる方にとっては、逆に入社後のミスマッチを防ぐポイントになりえますが、特に強いポリシーがない場合は、選考通過という観点から認識をしておいた方が良いポイントになるでしょう。
以上、海外転職における代表的な「面接官(キーパーソン)別の意識すべきポイント」でした。
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